レポート デザインの考慮点

任意の形式でのエクスポート出力の品質は、元のレポート デザインに大きく依存します。FastReport は、レポートの作成時には多数の方法でオブジェクトを操作することができます。これは、レポートの開発と、その後の印刷を迅速にできるという利点があります。印刷されたドキュメントは、プレビューされたものと同じになります。これが、FastReport レポート エンジンの主な目的です。

このように開発が自由である一方、FastReport ドキュメントを別のデータ形式へエクスポートする際には複雑になるというマイナス面があります。エクスポート先の形式にはそれぞれ独自の、ときには複雑な制限や要件があります。このセクションでは、エクスポート向けにレポートをデザインする場合の特別な要件について説明します。

HTML、XLS、XML、RTF、および CSV など、多くの形式が表式のデータ表現を用いています。FastReport ページのデザイン時に許される自由さとは対照的に、これらの形式にエクスポートする場合には、表のために作成された出力セルは交差させたり、複数のレイヤーに配置したりすることはできません。

エクスポート フィルターはこれらの要件を考慮した上で、FastReport からオブジェクトのエクスポートを行います。その際、セルの交差や最適な配置を処理する特別なアルゴリズムを用います。オブジェクトが交差する点には、出力される表に新たな行と列が作成されます。これは、FastReport がオブジェクトを正確に配置し、元のプレビュー ページと最大の一致を得られるようにするために必要です。

レポート デザインで多くのオブジェクトを交差させると、出力される表に多数の追加行と追加列が含まれることになります。このことがひいては、エクスポートされたファイルをさらなる使用に適したものとするために、そのファイルを独自のエディターで編集する必要性につながります。

たとえば、同じバンド上にある 2 つのオブジェクトがわずかに重なっているデザインのレポートがあり、レポート内のレコード数（行数）は 150 だとします。これを RTF 形式へエクスポートすると、450 行が作成されます（オブジェクト 1 つにつき 150 行、交差に対して 150 行）。重なりを取り除けば、300 行だけになります。多数のオブジェクトを含む大きなレポートであれば、この違いはもっと大きくなるでしょう。もちろん、これは出力ファイルのサイズにも影響します。

「表」の出力方法を用いる形式のいずれかへエクスポートすることを目的とするレポートをデザインする際には、以下のことを覚えておいてください。

レポート内で表をデザインするときは、隣接するセルの境界を意識する必要があります。セルが重なっていないことと、複数のレイヤーに配置されていないことが重要です。エクスポート アルゴリズムは、予期しない方法でセルを処理し、意図したものとは程遠い結果を与えることがあります。

オブジェクトは、縦方向も横方向も一直線に置かれるように配置することをお勧めします。ガイドラインはこれを達成するために役立ちます。

FastReport のデザイナーでガイドラインを使用するには、レポート ページの上端または左端にある水平ルーラーまたは垂直ルーラーをクリックして、そのルーラーをページ上の必要とする場所までドラッグするだけです。そこにガイドラインが表示されます。その後、これら水平方向と垂直方向のガイドラインに沿ってオブジェクトを配置できるようになります。

グリッド配置もまた、テキスト オブジェクトが重ならないように配置するために役立ちます。グリッドは、［デザイナー オプション］で有効になっており、ここでピッチの調整もできます。これらの設定は、［表示］>［オプション］メニューから開くダイアログの［グリッド］グループにあります。

テキスト オブジェクトの周りに罫線を使用する場合は、テキストの周りに線や四角形などのグラフィック オブジェクトを追加するのではなく、オブジェクトの Frame プロパティを使用することをお勧めします。また、透明なテキスト オブジェクトの下の背景でオブジェクトを使用しないようにしてください。

これらの単純なルールを頭に入れておくと、表ベースの出力方法を使用する任意の形式へエクスポートした後も最適に表示されるレポートを作成することができます。

以下に、オブジェクトの配置の良い例と悪い例をいくつか示します。

オブジェクトが水平方向にずれています。垂直方向のガイドラインに水平に並んでいません。

オブジェクトが重なっています。表/図表の形式へエクスポートすると、不必要な行と列のほかに、重なり合った区域に 3 つの余分なセルが作成されます:

最適なレポート デザインの基本原則を習得するには、FastReport のインストールに含まれているデモ レポートを学習することをお勧めします。